日本世論調査協会からのメッセージ
世論調査の役割とルール〜視聴率調査問題に関連して〜
2004.3
(財)日本世論調査協会
会長 中西 尚道
 日本テレビの一社員が、ビデオ・リサーチ社の関東地区視聴率調査対象世帯へ不正な働きかけを行った事件は、マスコミを通じて広く伝えられております。この事件は、視聴率調査事業の根幹を揺るがす卑劣な行為であるばかりでなく、広告取引のシステムを破壊する犯罪行為であると言うことができます。

 この事件の詳細とそれに対する視聴率調査会社ならびにテレビ業界の対応は、すでに関係メディアを通じて公表されていますので、ここでは省略しますが、(財)日本世論調査協会は、世論調査・社会調査の調査技術の向上に資するとともに、調査に対する社会一般の理解を深めることを目的とする公益法人としての立場から、社会に対して警告を発しておきたいと思います。

 今回の問題の対象となっている視聴率調査も、広い意味の世論調査の一つであり、調査主体の良心的・科学的な手続きに基づき、被調査者の協力に支えられて成り立つ公共的なものであります。この場合、匿名性が保持されることによって、被調査者が安心して調査に協力することができる状況が生まれ、長年の経験によって、安定した状況が構築されたものであります。

 このような信頼関係によって培われてきた調査のシステムが、日本テレビの一社員の犯罪によって破壊されたことを、広く認識していただきたいと思います。関係者の一時的な謝罪だけで元に戻るものでは決してありません。社会の成員の一人々々が世論調査の意義を正しく理解していただくこと、特に、統計理論に基づくルールに従った標本調査の意義を十分に理解されることを期待してやみません。

日本テレビは、この問題に関連して、「視聴率操作調査委員会」を設けて検討していると聞いていますが、調査の基本を理解した上で、対処されることを望みます。(財)日本世論調査協会は、世論調査を実施しているマスコミ各社、世論調査の専門機関などの団体会員と、世論ならびに世論調査を研究の対象としている大学・研究所の研究者などの個人会員によって構成されています。東京放送、テレビ朝日、フジテレビの在京テレビ各社は、現在も団体会員として加入しております。因みに、日本テレビは、2年ほど前に本協会を脱会し、現在は会員ではありません。

 最後に、世論調査の健全な発展のため、広く社会の皆様に、世論調査に対する正しい理解を賜りますようお願い申し上げます。 



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