会長メッセージ
「公益財団法人日本世論調査協会」
としての出発にあたって



会長 蛻 道夫

 「財団法人日本世論調査協会」は、このたびの公益法人制度改革を受けて認可申請を行い、公益法人としての認定を受け、新たに「公益財団法人日本世論調査協会」として生まれ変わることとなりました。

 まだまだ戦後の混乱が続く1948(昭和23)年、任意団体として産声を上げた「日本世論調査協会」は、1950(昭和25)年に財団法人となり、以来これまで活動をしてまいりましたが、2012(平成24)年4月1日より「公益財団法人」として三度生まれ変わることとなりました。

 本協会は、これまでも民間の非営利団体として公益活動をしてまいりました。本協会の活動が目指すところは、これからも基本的に変わるものではありませんが、これからは、公益認定法第1条にうたっている「内外の社会経済情勢の変化に伴い、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適切に実施しうる公益法人を認定する制度」という法制定の趣旨に沿って、一層公益性の高い活動を推し進めてまいります。

 本協会はこれまでもどこか特別のところからの補助金もなく、天下りも一切なく、自発的な独立した団体として活動してまいりました。その目指すところは、民主主義社会における民意の把握の基本である世論調査について、広く世間一般にその意義と重要性とを訴え、理解と協力を得ることであり、世論調査の進歩向上を図ることであります。そのため会員相互の連携による世論調査の科学的・理論的・実施上の研究・研鑽を重ね、研究成果の発表や調査結果の報告・記録を行い、世論調査関係書籍や、世界の動向などについて情報の提供を行っています。

 会員は新聞社・放送局・通信社など世論調査を実施する報道機関、大学や研究所ならびにその他各種の世論調査を実施する機関、および世論調査に関心を持ち、自らも世論調査を企画立案し実施する研究者などで、相互に連携協力をしています。

 ところで、現在世論調査は大変厳しい環境のもとにおかれています。都市部では、調査対象者の移動性の高さから、接触が難しくなっているほか、『個人情報保護法』の施行もあり、全国的にプライバシー意識が高まり、調査への協力が得にくくなっています。それに加えて、2006(平成18)年「改正住民基本台帳法」が成立し、「公職選挙法」の一部改正(選挙人名簿抄本閲覧制度の改正)が成立し、代表性のある確率論的に正確な調査対象者の抽出が難しくなってきています。

 こうした状況の中で、これまで通り統計学的に正確な調査を行おうとすれば、必然的に今まで以上に費用がかさむことになります。ところが世間一般には世論調査についての理解が必ずしも十分ではなく、クライアントから無理なコストダウンを強いられ、調査実施者の側も仕事の受注のために、少々無理な実施計画を立ててコスト削減を図るといった事態が起きています。

 このような時期にあたって、日本世論調査協会の役割は著しく重要度を増してきていると思われます。困難さを増している既存の調査方法の遂行に、また新しい調査方法の研究に、そして世間一般の世論調査への理解の浸透に、それと同時に調査実施者の側の倫理観を高めるキャンペーンに、と努めていかなければならないことはたくさんあります。

 本協会は、広く開かれた活動を目指しています。どうか皆さん、われわれの従事している世論調査の重要性を改めて認識していただき、日本の世論調査の発展のために、そしてより正確な日本の世論の把握のために、これまで以上に積極的なご協力をお願いいたします。新たに公益法人として出発するにあたって、ここに改めてお願い申し上げます。

〔平成24年(2012年)4月1日〕

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