次世代の調査のプロを育成していくシステムの確立を期待
この度、公益財団法人日本世論調査協会理事会において、会長に選任されました。初代会長の小山栄三先生、林知己夫先生、中西尚道先生、栁井道夫先生と各時代の高名な先輩を継いで名誉なことと思う一方で、たいへん身の引き締まる思いがいたします。
本協会の理事、監事、評議員、会員の皆様のみならず、日本の民主主義の基盤である科学的世論調査の遵守と発展に活躍されている方々のご協力を得て、一緒に歩んで行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
日本世論調査協会は、1950年に財団法人として設立されて以来、官民学の新聞社・放送局・通信社など世論調査を実施、報道する機関、大学や研究所ならびにその他の調査機関、そして世論調査に関心を持ち、自らも世論調査を実施する研究者が集い、互いに連絡提携を図り、世論調査の科学的・理論的研究・研鑽を重ね、世論調査の進歩向上を目指してきました。この間、世界世論調査協会WAPORなどとの国際的連携も図り、国際的調査研究にも参画してきました。
このほか、調査データの保存・再利用に関する研究も行い、近年の各大学・研究機関などの調査データアーカイブ設立にも寄与してきました。戦後からの日本の世論調査の歴史的背景に関する資料(GHQのPOSR文書など)の整備、今後の活用なども検討されています。
協会ホームページは佐藤寧・広報委員長により過去数年で大幅に整備され、本協会の沿革から最新の情報提供のサービスまで行われています。
研究大会は川本俊三・調査研究委員長の企画調整により年1回開催され、研究成果の発表、調査報告がなされ、またそれとは別に随時、研究会も開催されています。世論調査協会報「よろん」は荒牧央・編集委員長のもとで、世論調査に関する研究と成果、調査の報告・記録、世論調査関係書籍の書評、世界の動向などの情報提供を含め、年2回発行しています。「よろん」は科学技術振興機構のJ-STAGEにて創刊号から最新号まで一般公開されており、これらの全巻を俯瞰するだけでも、戦後民主主義を発展させるために尽力してきた先人たちの業績、現在の世論調査の課題が浮き上がってくることでしょう。
また、特筆すべき企画として、以前から峰久和哲・常務理事(現・代表常務理事)のもとで検討が開始され、新理事会では鈴木督久・公募調査委員長へと引き継がれた「公募調査」が、本年度から実施される予定です。これは、研究予算に恵まれない調査研究者にも自前の調査を実施する機会を提供するために協会が資金を拠出し、調査設計や調査票の企画からデータ収集と解析まで調査のプロたちが支援するという趣旨の事業です。当該のデータは、適切な時期に速やかに一般公開し、さらに多くの方々の利用に資することを検討しています。この事業を通じて、調査のプロが次世代の調査のプロを育成していくシステムの確立を期待しています。
村尾望・事務局長、徳永康彦・会場設営委員長、理事の池田建夫、井田潤治、谷藤悦史、大隈慎吾、福田昌史、栁井道夫の各氏、監事の飯田豊、渡邊久哲、小山政弘の各氏には、常にこれらの事業全般を支援していただいております。
評議員の上村修一、小柳雅司、中村英朗、林文、堀江浩、松本正生、中島哲平の各氏にも大所高所からのアドバイザーとしての役目を引き受けていただいています。
最後になり恐縮ですが、会員の皆様、国内外の調査専門家の方々には、民主主義の砦を守る科学的世論調査の維持と発展のために、引き続き御支援をよろしくお願いいたします。
令和4年(2022年)6月14日
会長 吉野 諒三