調査業務の国際標準化の時代へ / 島崎 哲彦

巻頭言

島崎 哲彦(東洋大学)

世論調査をはじめ、社会調査やマーケティング・リサーチといった調査の領域においては、先進諸国ではこれまで、調査に係わる個人や事業者の団体が倫理綱領や実施のガイドラインを定め、団体加盟者はそれに従って調査を実施するケースが多かった。
本協会の倫理綱領や実践規定も、これに相当するものである。

他方、国際標準化機構(ISO)は、製品品質を保証するための規格(後に、品質保証を含んだ顧客満足の向上を目指すための規格)であるISO 9000シリーズや、環境マネジメントシステムに関する規格であるISO 14000シリーズ等の国際規格を定め、先進各国の企業・団体・官公庁の間でこれらの規格取得が進展している。
近年、このISOが、マーケティング・リサーチ、世論調査、社会調査について、製品認証の中のサービス・プロセスの認証についてISO 20252を定め、国際標準化に乗り出した。
現在、ヨーロッパ、特にイギリス、それにオーストラリアをはじめとする調査機関において、この規格取得が先行して開始されている。

日本では、マーケティング・リサーチ機関の団体である(社)日本マーケティング・リサーチ協会が、昨年度から調査機関等やISO規格の認証機関、認証機関を認定する(財)日本適合性認定協会(JAB)、監督官庁である経済産業省から委員あるいはオブザーバーとしての参加をみて、ISO 20252認証協議会を発足させ、導入を検討してきた。
その結果、2009年初頭から認証機関によるプリ・テスト、パイロット・テストが実施され、2009年度内には本格的に認証が開始されようとしている。また、パネル調査(その多くはインターネット調査)についても、ISO内で別途規格内容(仮ISO 26362)が検討の最終段階にあり、やがて日本にも導入されることとなろう。

これらの標準化は、調査の品質の向上を目指して、調査の企画から報告に至るプロセスを標準化しようとするものであり、主として調査を実際に実施する機関に関係するものであると考えられる。

日本における世論調査は、マスコミ、官公庁、研究者によって企画されるものが大半を占めており、一部はそれら機関自らの手で、一部は外部の調査専門機関に委託して実施されてきた。
いずれも、調査結果が公表されることとその社会的影響の点から、精度の高い手法を用いてきたと考えられる。しかし、他領域を含めた日本におけるすべての調査がそのような水準にあったとは言い難い。
そこで、このISO規格の導入は、日本における調査全体の水準の底上げに働くものと期待されるのである。世論調査界においても、このような潮流への関心の喚起をうながしたい。


この巻頭言は「よろん」103号に掲載されました。

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