特別研究大会特集号によせて / 栁井 道夫

巻頭言

栁井 道夫(財団法人日本世論調査協会 会長)

 「財団法人日本世論調査協会」が法改正によって改めて国の審査を受け、「公益財団法人日本世論調査協会」となったことを記念して、2014(平成26)年11月13日、14日の2日間、海外からも研究者を招いて特別研究大会を開催することとなりました。
この特別研究大会の企画に当って、大会実行委員会から「戦後世論調査の始まりと基礎」というテーマで会長報告をするようにという要請がありました。

しかし自分としては、日本世論調査史について勉強したこともなく、体調も悪く、入院・手術も予定されており、しかも記念大会までに日数もなかったので、この要請を受けることにはかなりの躊躇がありました。
しかし諸般の事情から受けることにしました。

こうした条件下で受けた要請ですので、基本的にはまず先輩たちが残してくださっている資料にできる限り目を通し、自分なりに終戦直後の数年間の日本における世論調査の状況を把握し、その時代の流れを探り出していこう、これが私の考えたことでした。
そこでまず手にしたのが1986(昭和61)年に発行された日本世論調査史編集委員会の手になる『日本世論調査史資料』でした。初めに一読したとき、これは大変な宝の山だと驚かされました。今までこれを手元に置きながら、ほんの一部にしか目を通さなかったことは愚かだったし、これを手がけられた先輩たちに対して大変失礼だったと感じました。

しかし資料集ですので、これに一度目を通しただけではこの時代の全体的把握も、流れを掴むこともできませんでした。繰り返し目を通し、戦後史の中に位置づけ、1965(昭和40)年から発行されている『日本世論調査協会報』(現『よろん』)の初期のものにあたり、自分なりのイメージを描きました。
そしてあとは限られた材料を病院に持ち込んでベッドの上で大会での報告に備えるしかありませんでした。  『協会報』にもたくさんの宝が潜んでいました。『資料集』にも『協会報』にもつまらないものが数多くある、という人もいます。
しかし資料というものは、それを読み解く人の目によって、瓦礫の衣をまとった黄金であると認められることがしばしばあるのです。しかし今回私が触れた資料には、瓦礫の衣をまとわない黄金が無数にありました。

これらたくさんの黄金を残してくださった世論調査史編集委員会の方たち、そしてこの方たちにさまざまな形で協力された方たち、その他多くの先輩たちに敬意をはらい、感謝せざるを得ません。
そして同時に後の時代に向けて、われわれも後の時代に貴重なものとなるであろう記録をきちんと残していかなければならない、と強く感じさせられたことでした。


この巻頭言は「よろん」115号に掲載されました。

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