巻頭言
中村 英朗(日本リサーチセンター)
最近、世論調査について様々な事を思考する出来事があった。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規制法違反事件である。世間で騒がれたこの事案については、識者の皆様はご承知のことと推察されるので、事案内容はここでは省かせて頂く。
この事案により、岸田政権への世論調査による支持率は過去に類を見ないほど低下した。ただここまでは、因果関係によるただの結果にしか過ぎず、ここでは別の切り口について考察してみたい。報道・各マスコミ機関は、こぞって、支持率低下に伴う、政権への不信感を煽り、自然と国民は政権及び政治自体への負のイメージを持ち、誰もが批判的な見方になったものと考えられる。
ここで一度、ぜひ立ち止まって考えてみて欲しい。世論調査の本来の役割とは何だろうか。世論調査の結果が示す本当の意味とは。
この支持率低下の本当の意味、これは果たして現政権の特定派閥の問題だけの話なのだろうか。この事案、議員側にも問題があったのは明白だが、その問題があった背景を我々は考察すべきではないだろうか。この問題のあった国会議員や政党を選んだのは、何を隠そう我々有権者自身である。この世論調査の結果から反省すべきはむしろ有権者自身ではないだろうか。
報道・マスコミ機関は、数字の発表と共に、何が背景に潜んでいるかの示唆と正しい理解のための道程を本来示すべきではないだろうか。報道する権利と義務は常に表裏一体である。若者を中心とした政治への関心の喚起も然るべきであろう。
世論調査を世論把握のために利用するだけではなく、その背景に潜んでいるもの、物事の本質の持つ意味を我々は考え、発信する役割を持つようにしたい。
世論調査を世論把握のために利用するだけではなく、その背景に潜んでいるもの、物事の本質の持つ意味を我々は考え、発信する役割を持つようにしたい。
世論調査は、現実を把握するのに適切な手法であるが、その結果をどう扱うかが重要だと再認識した次第である。
この巻頭言は「よろん」133号に掲載されました。